項羽と劉邦

司馬遼太郎の、『項羽と劉邦』読みました。
実家にあるものを持って帰ってきた本です。



これを読んで非常に中国人らしいな〜と感じました。
「人がすさまじく殺される」とか言うネガティブな話じゃないですよ・・・



やや話はそれますが、ワタシの実家には漫画の三国志もあります。
60巻全部そろってます。
何度か全部読みました。漫画なので。



で、三国志にせよ、項羽と劉邦にせよ、なんとなく共通するのは、何の実績もなく、なぜか自分の能力に自信だけはある人間が、うまいこと引き上げられた途端にその能力を発揮し、すばらしく活躍するというもの。



一歩間違えば浮浪者同然の人が、自分を売り込み小さな役人になる。
でも、あまりに小さな身分でやる気は起きずだらだらと過ごす。
「俺に大将をやらせろ」と王に言い、王はその人柄を見て大将をやらせてみる。そしたら見る見るうちに活躍していくってな感じです。




この感覚って、中国人に良くある気がします。
初めから大きな仕事をやらせて欲しいという感覚です。
「俺はこんな小さな仕事をする人間じゃない」みたいな。



ただ、日本人には受け入れられない。
例えば、新入社員がいくら熱弁をふるって、「この新事業は私なら絶対成功します。1000万円出してください」と言ったところで相手にされない。
一事が万事で、小さい仕事もしっかりこなせない人間に、大きな仕事は任せられない。まずは少しずつ実績を積むことが大事と考える。



ところがこっちでコツコツとか言うのはイマイチ理解されない気がします。
ワタシの事務所の営業マンが一人辞めます。3人の事務所で1人いなくなるんですから打撃は大きいです。
けど、彼は言うことは立派だけど、行動しない。
あれしたい、これしたい、と言うものの、目先の仕事を平気で放置する。
何だかんだ理由をつけて細かい仕事をこなそうとしない。凡事徹底ができないんですね。
だから辞めるのは、会社としては悪くないと考えています。



その辞める営業の彼は独立します。
恐らくあまりうまくは行かないでしょう。
「中国で成功するには、人脈とタイミングだ」と言っている彼は実務を疎かにしすぎています。



たしかに、中国では若くして成功している人が多くいます。
でも、独立してうまく行っている人はやはり勤め人時代にしっかりと下積みをしています。



劉邦には非常に『徳』があり、多くの人たちが慕ってきたとあります。
しかし、本当に才能のある人、優秀な人はそう多くは無かったはずです。
本の中でも、「わが軍にはそんなに人がいないのか」と優秀な人材不足を嘆く劉邦の姿がよく出て来ます。



そういう意味では、やはり実績を積み重ねて行ってだんだんと大きな仕事がこなせるようにしていくという考え方は、正しいと考えます。
ただ、ワタシがいるのは中国であり、今後ワタシが採用する人間は中国人です。彼らがそのような感覚を持っているということは意識したうえで、進めていかないといけないなー と感じたのでした。